放送・通信サービスの継続性を確保。UPSの無瞬断切替工事を実現

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課題
- 放送・通信サービスの多様化に伴う通信基盤高度化の必要性
- 停電や機器故障に伴う電源喪失による放送・通信サービス停止の懸念
- 電気設備に不具合が発生した際、故障個所の切り分け等を的確に判断できる電気設備技術者の不足
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解決策
- 伝送路のFTTH※化や局舎の設備増強による情報通信基盤の強化 ※Fiber to the homeの略
- 豊富な実績や万全な体制を備えた電源供給無瞬断切替サービスによるUPS更改
- 電気通信サービスの構築・保守で培ったサポート体制や詳細な手順書の活用
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効果
- 放送・通信サービスの信頼性向上・業務継続性の確保
- 停電に伴うシステムダウン等のリスク軽減、運用保守の効率化
- 手順書を元に計画的なUPS更改が進められる保守体制の整備
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日本海ケーブルネットワーク株式会社
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- 取締役執行役員 地域連携基盤推進部長 兼メディア推進担当 吉田 幹也様
- 地域連携基盤推進部 システムデザイン課 課長 前田 修司様
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課題
喫緊の課題だった光ケーブル増強や電力設備改修
鳥取県東中部の情報インフラを支えるケーブルテレビ会社として、多チャンネル放送や光インターネット、固定電話、格安スマホといった事業を多角的に展開している日本海ケーブルネットワーク株式会社(以下、NCN)様。事業エリアの県東中部の2市2町内のうち7割にあたる約4万世帯のお客さまにご利用いただいています。
多チャンネル放送事業では地上波・BSのテレビ放送だけでなく、スポーツや映画などの専門チャンネルを、光ケーブルを通じてお客さまへお届けしています。インターネット接続事業では、一般家庭向けでは鳥取県内最速の下り最大10Gbpsの高速サービスを提供しています。さらに、固定電話サービス「ケーブルプラス電話」やMVNO(仮想移動体通信事業者)として「NCNスマホ」の提供など、地域の情報基盤を支える通信サービスを幅広く展開しています。
ブロードバンドの普及や地上デジタル放送開始を受けた2011年当時、NCN様では放送・通信サービスの品質維持・向上に向けた伝送路の光化を計画していました。その一環として鳥取放送センターの光ケーブル増強や電力設備の改修を行うこととなり、協力会社選定プロセスを経て選定されたのがNTTグループでした。選定経緯について吉田様は当時をこう振り返ります。
「サービスの多角化・多様化が進む中で、放送センターやサブセンターの高度化は喫緊の課題でした。そこで施工体制やスキル、実績をトータルに評価してNTT西日本・中国を採択し、建築・電力設備工事はNTTアノードエナジー(当時 NTTファシリティーズ)に担っていただきました。安全や工程調整に対する意識の高さ、現用設備の調査から切替手順の策定まで緻密な工程で作業を進め、スケジュール通りに完了するNTTグループの姿勢は信頼に価するものでした」

サービス基盤のFTTH化に伴い、各拠点のUPS更改が急務に
NTTアノードエナジー(当時 NTTファシリティーズ)では、改修工事が竣工した鳥取放送センターをはじめ、各拠点の電気設備などの保守業務を請け負うとともに、2020年からはサブセンターの構築工事やCATVヘッドエンド※設計施工工事を相次いで受託しました。2023年には湖山南サブセンターのヘッドエンド工事を受注するなど、豊富な実績やノウハウを活かして、お客さま宅までのFTTH化をめざすNCN様をサポートし併走してきました。
2024年7月には点検作業にて、本社屋上に設置した自家発電機の始動部の不具合により、発電機が自動起動できない状態であることが判明しました。NTTアノードエナジーは修理品をメーカーに急ぎ手配するとともに、停電等が発生した場合に発電機を手動で起動するための作業手順書を準備し、NCN様に具体的な作業をレクチャーしました。また、NCN様側では万が一の事態に備え24時間体制での待機を実施しました。
このように、両社で連携し、発電機の自動起動が不能という異常状態において運用面や早期の復旧に向けて取り組みました。 NCN様の放送・通信サービスの要となる鳥取放送センターや各地のサブセンターには、非常事態に備える自家発電設備や商用電源の障害時にも無停電で電力供給を継続するUPS(無停電電源装置)が設置されており、放送・通信設備に電力供給を途絶させない環境整備が進められました。センター設備の増強に合わせて2011年頃から設置したUPSの老朽化が懸念される中、「停止が許されない」放送・通信サービスに電源を供給するUPSの維持や更改は大きな課題でした。
※CATVヘッドエンド:ケーブルテレビ事業者が受信した各種放送を、業務区域の視聴者宅に再送信するための設備
解決
1年間に及ぶUPS更改作業で痛感した無瞬断切替の必要性
電力供給状況を常に監視し、通電が途切れると直ちに内蔵バッテリーから給電を行うUPSを更改するには、接続されている放送・通信機器類の電源を一旦OFFにし停電状態とした上で、放送・通信機器を新しいUPSの系統に切り替える方法が一般的です。
そこでNCN様では2014年に実施した既設HE室(ヘッドエンド室)のUPS更改において停電切り替えによる作業を実施しました。準備期間も含めると工期終了までおよそ1年を要し、対象エリアの放送・通信サービス休止とお客さまにも影響が及んだUPS更改について、前田様はこう説明します。
「はじめに、既設HE室内の現用コンセントバーの隣に切り替え用の仮設コンセントバーを設置します。次に、現用コンセントバー側に接続されている放送・通信サービス用の機器を仮設コンセントバー側に切り替えますが、切り替えの間は機器の電源はオフになります。すべての機器を仮設コンセントバーへ切り替えが終わった後に、現用コンセントバーに給電しているUPSを古いものから新しいものに交換します。今度は、仮設コンセントバー側に接続した機器を新しいUPSから給電された現用コンセントバー側に切り戻しますが、この切り戻す際も機器の電源はオフになります。放送・通信サービスに極力影響が出ないよう、1回あたりのサービス停止を2時間程度にとどめる必要があります。サービスが複数あり、1回のサービス停止ですべての機器が仮設コンセントバーへの移設が完了しないため、同様の作業を複数回実施しました。コンセントバー移設作業1回だけでも膨大な時間や手間を要する作業でした」
仮設コンセント設置などを担当したNTTアノードエナジーでは、NCN様のご苦労を目の当たりにしていたことから、UPSを無瞬断で切り替え可能な「電源供給無瞬断切替サービス」(以下、無瞬断切替サービス)を提案しました。UPS間の切り替えにおいて停電を伴わない無瞬断のメリットに加え、豊富な導入実績や手厚いサポート体制もアピールしたことで受注に至りました。

無瞬断切替サービスで、迅速かつ安全なUPS更改を実現
NTTアノードエナジーが提供する「無瞬断切替サービス」は、独自開発した切替装置や通電状態のまま作業が可能な通電接続技術を用いて、2台のUPSを無瞬断で切り替えられるサービスです。「無瞬断切替主任技術者」という社内認定資格を設けており、資格取得者を中心としたチームによる安全かつ確実な作業で工事を実施します。無瞬断切替サービスを採用した経緯について、吉田様は次のように説明します。
「UPS更改に伴うサービス停止はお客さまに多大なご迷惑をおかけし、工事に膨大な時間や手間がかかります。さらにシステムの電源を遮断することで想定外の事態も発生しかねないことから、電源は止めたくないのが本音。伝送路の運用保守に手一杯で、電源に詳しい技術者も社内には少なく、熟練の有資格技術者に任せられるNTTアノードエナジーの無瞬断切替サービスは、まさに“渡りに船”のサービスでした」
そこでNCN様では2019年から2021年にかけて順次更改時期を迎える倉吉放送センター内の3台のUPSを対象に無瞬断切替サービスを用いた工事を実施し、準備期間も含めて1台あたり約1週間でUPS間の切り替えが済むなど、迅速なUPS更改が実現しました。

効果
不具合切り分けの迅速な判断で、突発的な事態も柔軟に対処
2011年にNTTグループが改修を担当した鳥取放送センターにおいて、UPS設置後10年を過ぎていたことから無瞬断切替サービスを利用した移行作業を2024年に実施することとなりました。センターには同時期に更改する複数台のUPSが稼働していたことから、最初に切り替えたUPSを仮設電源として利活用する計画でしたが、仮設電源として接続して通電した直後に動作不良が発生しました。トラブルは内蔵バッテリーの不具合に起因すると想定されたことから、一旦元の状態に切り戻した上で、対応策を検討することとなりました。 こうしたNTTアノードエナジーの対応について、前田様はこう評価します。
「移行作業がほぼ完了していた段階でしたが、直ちに切り戻すことになりました。安定した電源設備環境の確保を最優先に考え、楽観的な見通しで無理に工事を進めないNTTアノードエナジーの慎重な姿勢は高く評価できました。インフラ設備に携わる会社の危機管理意識は当社と同じであり、これなら任せて安心と確信したのです。不具合切り分けを瞬時に行い対処方法を早々に導き出すのも、運用保守に長年携わってきた実績やノウハウが存分に発揮された結果とみています」
鳥取放送センターのヘッドエンド室には新たな機器が相次いで設置されるなど、改修当時と比べても手狭な状況でしたが、移設手順の調整などを適宜工夫したことで、UPS更改を無事完了できました。

地域連携に向けた基盤整備に寄与する先進提案や支援に期待
2025年に実施した若葉台サブセンターのUPS更改に際しては、電源設備が2系統と冗長化され、1系統ずつ電源を遮断することが可能だったことから、停電切り替えによる更改を選択されたNCN様。低コストでの実施を求められていたため、短期間での切り替えと、NCN様ご自身での系統切り替え作業を実施することになりました。 自社で作業を行った感想や、NTTアノードエナジーに対する期待について、前田様はこう語ります。
「提供された詳細な手順書のおかげで安心して工事を進めることができました。実施手順が分かりやすく記載されており、不具合発生時の対処法も明記されています。通信インフラの運用保守に長年携わってきたノウハウがここにも結集されており、今後のサブセンターのUPS更改の道筋ができました。両社の協力により、機器の搬入から切り替え・撤去までを数日で完了した作業手順に手応えを得るとともに、NTTアノードエナジーにはこれからも変わらない高品質なサービス提供に期待しています」
今回の実績を踏まえ、電源設備が冗長化されているサブセンターについては停電切り替えを前提とした更改作業の実施も選択肢に加えられました。
「2024年に伝送路のFTTH化が完了し、エリア内の施設整備は一段落しました。お客さまに寄り添い、地域連携に寄与するDX推進がこれからのミッションです。NTTアノードエナジーには引き続き、手厚い支援で地域の基盤整備に寄与していただくことを願っています」と、吉田様は今後の展望について語ります。
お客さまにいちばん身近な存在として、地域の情報通信環境を支えるNCN様を、NTTアノードエナジーはこれからもさまざまな角度からサポートしていきます。
会社名 | 日本海ケーブルネットワーク株式会社 |
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本社所在地 | 鳥取市富安2丁目137(日本海新聞本社ビル) |
設立 | 1985年3月4日 |
資本金 | 4億8千万円 |
事業内容 | 多チャンネル放送サービス、インターネット接続サービス、 固定電話サービス、格安スマホの提供、スマートフォンの販売、地域情報番組の制作・放送 |