提供:NTTアノードエナジー

NTTアノードエナジー

NTTグループのノウハウや
アセットを活用
再エネ生かした
「エネルギー流通」促進

小濱雅典 田中浩平 岩本和明

高村ゆかり氏 東京大学未来ビジョン研究センター教授(写真右)
谷口裕昭 NTTアノードエナジー執行役員営業本部長(写真左)

2019年に誕生したNTTアノードエナジー(東京・港)は、再生可能エネルギー(再エネ)を最大限に生かしたエネルギー流通ビジネスを手掛け、2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けさまざまな取り組みを行っている。同社が貢献できるソリューションや強みとは――。脱炭素の第一人者・東京大学未来ビジョン研究センター教授の高村ゆかり氏が、NTTアノードエナジーの谷口裕昭・執行役員営業本部長に聞いた。

再エネ拡大、エネルギーの脱炭素化
グループで日本の電力消費の1%使用

日本政府は今、次期「エネルギー基本計画」について議論を進めています。2030年度以降の電源構成の検討を含め、今年度中に改定される予定です。GX(グリーントランスフォーメーション)の2040年ビジョンも検討される予定です。エネルギー基本計画の検討を始める審議会で斎藤健経済産業相が発言されているとおり、日本は今、「エネルギー政策における戦後最大の難所」にあります。中でも、日本は発電電力量に占める再エネの割合が他の先進主要国と比しても低い。再エネの拡大、エネルギーの脱炭素化がどう進むのかは、日本企業の資本市場での評価や国際競争力にも関わる問題として認識されるようになっています。

私たちNTTグループにとっても、自身の脱炭素化は大きな課題です。グループとして事業を通じて使用する電力消費量は日本全体の1%ほどにもなります。そこで2021年に新しい環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を発表しました。再エネ利用の拡大、次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」による電力消費量削減、省エネなどに取り組み、2030年までに温室効果ガス排出量を80%削減し、まずはモバイル、データセンターのカーボンニュートラルを達成。そして2040年までにNTTグループ全体でのカーボンニュートラルの実現を目指しています。

NTTグループ温室効果ガス排出量の削除イメージ(国内+海外)
●再生可能エネルギー利用を拡大し、温室効果ガスを45%削減  
●IOWN導入により電力消費量を削減し、温室効果ガスを45%削減
※2021.9.28 NTT 新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」より作成

太陽光発電は1960年代から
再エネ確保拡大、維持運営も強み

NTTグループの中で、NTTアノードエナジーはどのような役割を担い、どのような事業を展開していますか。

NTTアノードエナジーは、再エネを活用した電力事業を通じ、NTTグループ自らのカーボンニュートラルを実現するとともに、企業や自治体といったお客さまのGXに貢献する役割を担っています。現在、太陽光を中心に風力、地熱、バイオマス発電といった「グリーン発電」、「ドコモでんき」などの「電力小売」、再エネ流通を差配する「アグリゲーション」、再エネ流通の安定運営を支える「エンジニアリングソリューション」の4つの機能を使いながら、発電から供給まで効率的に行う「エネルギー流通ビジネス」を展開しています。

NTTアノードエナジーの事業内容
NTTアノードエナジーの事業内容

再エネの拡大には、発電に加え、長期に運用していくためのメンテナンス、分散型電源をうまく組み合わせて運用するネットワークも必要です。この3つがそろっている事業体はなかなかないのではないでしょうか。

そうですね。NTTグループの太陽光発電は、1962年に公衆電話の非常用電源として導入したのが始まりなんですよ。その後、三鷹の研修センターの大型ソーラー、固定価格買い取り制度(FIT)の開始時には山梨県北杜市のメガソーラーへとつなげていきました。こうした経験とともに、NTTグループの通信電力設備の構築や保守で培ったICT(情報通信技術)やノウハウ、全国各地にある拠点をしっかり活用していきたいと考えています。昨年8月、国内トップクラスの風力発電事業者グリーンパワーインベストメント社を傘下に収め、2030年の目標、再エネ電源約80億kWh達成が視野に入りました。

セブン&アイと「オフサイトPPA」
100%再エネ店舗に貢献

高村ゆかり氏 東京大学未来ビジョン研究センター教授
高村ゆかり氏 東京大学未来ビジョン研究センター教授

多くの電力を消費する事業者としての責任を自覚しつつ、それを強みとして脱炭素に向けたソリューションを提供しているんですね。法人向けの具体的な展開例を教えていただけますか。

高村ゆかり氏 東京大学未来ビジョン研究センター教授
高村ゆかり氏 東京大学未来ビジョン研究センター教授

企業など法人向けには、温室効果ガスの排出量削減計画の策定支援、排出量を可視化するプラットフォーム提供、コンサルティング、具体的な省エネ・再エネサービス提供など、NTTグループ各社と連携しながら脱炭素に向けた全フェーズでソリューションを整えています。

例えば、セブン&アイグループ(セブン&アイ)さんとは「オフサイトPPA(電力購入契約)」を交わしています。NTTアノードエナジーがセブン&アイさん専用の太陽光発電所を遠隔地に設置し、セブン-イレブンやイトーヨーカドーの店舗に長期間にわたり電力を供給する仕組みです。国内初のオフサイトPPAで、再エネ100%の店舗を目指すセブン&アイさんの取り組みに貢献しています。

セブン&アイグループとの「オフサイトPPA」展開

NECプラットフォームズさんの福島事業所でもオフサイトPPAによる再エネ電力の利用を開始しています。同事業所は、NTTグループのIOWNや省電力技術を実装したネットワーク関連製品を製造しており、私たちのサプライチェーンでの脱炭素にもつながる「スコープ3」*の取り組みです。

*「スコープ3」:サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量

なるほど。お客さまにとっても、NTTさんにとっても有益なおもしろい展開ですね。

エネルギーの地産地消を後押し
「脱炭素先行地域」の自治体など支援

NTTグループの通信インフラ事業は、地域とも強いつながりがあると思います。地域や自治体向けにはどのようなソリューションがありますか。

エネルギーの地産地消に向け、地域内エネルギー需要バランスの最適化の計画策定、地域新電力の設置、オンサイトPPAなどさまざまなサービスを展開しています。環境省が進める「脱炭素先行地域」で、これまでに採択された74自治体のうち9の自治体をNTTグループが支援しています。

例えば「ネットワーク型コンパクトシティ」を掲げる宇都宮市は、公共交通ネットワークを充実させ自家用車からの二酸化炭素排出量を減らす取り組みを推進しています。その象徴が、昨年8月に開業した次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)」です。NTTアノードエナジーは、宇都宮市も出資する地域新電力会社「宇都宮ライトパワー」を共同で設立。ライトラインが地域由来の再エネ100%で走行する「ゼロカーボントランスポート」を後押ししています。

地域由来の再エネ100%で走行する宇都宮LRT(ライトライン)。NTTアノードエナジーは「ゼロカーボントランスポート」を後押し
地域由来の再エネ100%で走行する宇都宮LRT(ライトライン)。NTTアノードエナジーは「ゼロカーボントランスポート」を後押し

次世代通信基盤「IOWN」に期待
最適なEMS構築を進める

ICTなどのデジタル技術とインフラに加え、地域とのつながりを有し、それらをエネルギー流通の観点で展開する事業基盤を持っていることは、まさにNTTアノードエナジーの強みですね。こうした強みを生かし、新たなエネルギーシステムの構築、循環型社会の実現に今後さらに貢献できる点はどんなことでしょう。

谷口裕昭 NTTアノードエナジー執行役員営業本部長
谷口裕昭 NTTアノードエナジー執行役員営業本部長

開発中の「IOWN」が歩を進めてくれると思います。この構想が実現すれば省電力に大きく貢献するはずです。加えて、可視化による省エネや大型蓄電池の活用などで最適なエネルギーマネジメントシステム(EMS)を構築していきます。現在のICTに加え今後は、AI(人工知能)を導入するなどで精度の高い発電・需要予測を行い需要をコントロールする。こうしたチャレンジは、生成AIによりニーズが高まるグリーンデータセンターの構築も後押しするでしょう。NTTグループ全体で推進していきます。また災害復旧の面でも、通信と電力の復旧は表裏一体なので、ICTの支援を受けながら努めていきます。

谷口裕昭 NTTアノードエナジー執行役員営業本部長
谷口裕昭 NTTアノードエナジー執行役員営業本部長

脱炭素の取り組みは中長期視点で
事業を見直す機会にすればチャンスに

脱炭素化の取り組みは、もちろん気候変動対策であり、私たちの地域や生活を守る意味で大切です。一方で企業にとっては、首尾よく遂行できなければ将来の経営リスクにもなりかねません。経営者の皆さんには、目の前の課題としてではなく、中長期の視点で経営や事業を見直す機会にしていただきたい。そうした発想で課題解決に臨み脱炭素化の取り組みが成功すれば、企業が成長する大きなチャンスになると思います。NTTアノードエナジーさんはじめ、さまざまなソリューションを提供している企業がありますから、連携できる事業の機会を、ぜひ見つけていただきたいですね。

NTTアノードエナジーは、「地域とともに、パートナーとともに、仲間とともにカーボンニュートラルを実現するエネルギー流通のリーディングカンパニーへ」を経営ビジョンに掲げています。実現に向けては当然、私たちだけでは解決できない課題もあり、パートナーの皆さんの力を借りることも必要です。ぜひ私たちとともに、「攻めのGX」で、カーボンニュートラルを実現していきましょう。